平成23年1月11日(No5136)  春はそこまで来ている

春はそこまで来ている

昨年の11月、花壇にパンジーの苗とチューリップの球根を植えて以来、あれこれ気忙しく折角の花壇をゆっくり見る暇がなかった。新年になって冬には似合わない好天が続いているのに、パンジーが寂しそうだなとふと思った。水も光も十分足りているのに…。そうなると居ても立ってもおれず、花壇にしゃがみ込んだ。腰が痛い。治ってはいなかった。

 

歩きながらチラッと見るのと、しゃがんで地面に近付くのとでは世界がまったく違う。パンジーは植えっ放しだから、役割を終えた花や茎がへばりついていた。これでは若い花が咲かない。雑草もいっぱい芽を出して伸びはじめている。何とチューリップが土の上でとんがっている。これにはびっくりした。暦では「寒」に入ったばかりなのに春を告げている。

 

長い間無関心でいたことを詫びながら、パンジーの不要な花びらや茎を取り除いた。心なしか喜んでいるように見える。痛む腰をさすりながら、ついでだから草も抜いた。まだ根が浅いので苦労はない。夢中になっていると靴の底をつついている。チューリップが春の訪れを告げたのだ。メガネを新しくしたせいか、次々に芽を出している錯覚におそわれた。

 

180球植えているが、早くも半数近くが春の合図をしていた。まるで「早春賦」を手玉に取っているようだった。思わず声に出して歌った。「春は名のみの風の寒さや、谷のうぐいす歌は思えど、時にあらずと声も立てず、時にあらずと声も立てず」。美しい詩だが目の前の花壇とは違いすぎる。これから本格的な寒さが始まる。耐えて可憐に咲いて欲しいと願う。

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