平成25年1月4日(No5860) 1月4日
1月4日
エッセイストで元住友生命常務の金平敬之助先生とは10年もはがきの往来があった。きっかけは講演を拝聴したあとの名刺交換。穏やかな笑顔に魅せられて厚かましく講演の感想を送った。著名人だけに返信は期待していなかったが、思いがけずムダを削り取ったはがきが届く。お互いに長島茂雄さんの熱狂的ファンという共通項が、わが人生を豊かにした。
長島さんが引退してからは、ヤンキースで活躍した松井秀喜選手にテーマが代わった。長島→松井と799通に及ぶ。その松井選手が引退を表明した。20年のプロ現役生活の思い出のトップに、長島さんと二人だけの素振りをあげたのは意外だった。あこがれのヤンキースで打った初ホームランよりも印象に残っているとは!松井選手の人柄を表している。
引退会見で感銘を受けたのは、プロとしての誇りを如実に見せたこと。大リーグで活躍した日本選手は、自由契約になると大半が日本球界に復帰する。そして引退する。松井選手にも古巣の巨人軍をはじめ多くの球団から日本復帰を求められた。それにもかかわらず引退の道を選んだ。会見では穏やかな表情で語り、ときおり少年のような恥じらいを見せた。
「もしも巨人軍に復帰すれば多くのフアンの方が、10年前の姿を見たいと思うし、期待します。正直言ってその姿に戻れる自信が持てませんでした」。金平先生は天国で喜んでおられるに違いない。松井選手は最後までフアンを裏切らなかった。紳士だった。長島さんは20年のときを経て、初めて松井選手を褒めた。「彼は最高のホームランバッターだった」。