平成24年11月3日(No5798) 政治に翻弄される
政治に翻弄される
唐戸魚市場の社長を務めている松村久さんは、10数年来のはがき畏友である。フグ初せりのニュースでは必ずテレビに顔を見せる著名人だ。豪快な人だが最近は嘆き節が増えてきた。魚の売れ行きが減ってきたせいだ。フグは首都圏の料亭などで人気があり心配していないが、問題なのは大衆魚など家庭向きのお魚さん。最近の主婦は自宅で包丁を握らない。
わが家の食事はさかなと野菜が中心で毎夜、2~3種類のさかな料理が食卓に並べられる。さかなの仕入れは魚屋さんに限っている。ただし養殖魚は食べない。3年前の総選挙で民主党が政権を獲得し、ばらまき政策を展開した。その一つが高速道路の無料化である。民主党のやり方を批判しながらも、浜田漁港に至る高速道の無料化(社会実験)は歓迎した。
港内にある「しまねお魚センター」は広島方面からの買い物客で賑わい、駐車場はマイカーで溢れた。朝、水揚げされた魚介類は新鮮で美味しく、価格も安かった。ガソリン代を払ってもお釣りがくる。おさかな好きにはたまらない魅力でせっせと買出しに通った。盤台に魚介類を並べておけば、少しの愛想で売れた。特に売り方の工夫は必要なかった。
高速道の社会実験が終わり、再び有料になった。無料に親しんだお魚ファンは呆気なく離れて行った。先週の日曜日、島根に所用があり立寄った。一年前の賑わいは消えていた。馴染みの店は間口を半減し、向かい側の繁盛店は貸し店舗の札が揺れていた。新しいアイデアで勝負する店もあったが、果たして復活できるか。過疎の高速無料化は続けるべきだろう。