平成25年4月20日(No5966) 売りたくても売れない家
売りたくても売れない家
後期高齢者夫婦になった高校時代のクラスメートが、25年暮らした住まいを売り たいと言う。豪華な和風住宅を拝見しながら、社長と一緒に相談を受けた。かつて高級住宅団地と評価された地域も、今では高齢者にとって住み辛くなったと愚痴をもらす。若いときは足も丈夫だった。団地の上り坂も苦にならず、車も運転できた。買い物にも不自由はなかった。
既に都心の便利がいいマンションに住み替えする手当てを済ませ、ご近所とのお別れ会もした。不動産屋に売却を依頼したが、評価は極めて低い。値段を下げても買い手が付かない。自慢の住まいではあるが、売れなければ役に立たない。25年前は元気だった。終の棲家と決めてはいたが、老いが承知してくれない。 悠々二人暮しの広さが仇になった。悔しい。
若い家族にとっては「木の家」に価値を求めない。自分の収入に見合った価格、家族が暮らしやすい間取りがいい。いまどき和風の大邸宅に魅力を感じるのは高齢者世代だが、団地の大きな家には売主と同じ理由で暮らせない。資産に余裕があれば都心のマンション暮らしがいい。老い先短い高齢者には銀行も資金を貸してくれない。魅力を感じるだけで終わる。
大きな家を壊して平地にし、魅力的な小住宅を何戸か建てれば売れる。親子で暮らしたい若い世代は多い。地域ではこうしたミスマッチが急激に増えている。益々、団地は過疎化が進む。ダンピングしても売れなくなる。もったいないという思い入れや郷愁は価格に反映しない。土地の広い洒落た和風住宅には、家が買ええる年代層は振り向いてくれなくなった。他人事ではない。間もなくわが家にも同じテーマが意地悪く襲ってくる。戸建てに高齢者が暮らせない時代が目前に迫る。