平成29年6月14日(№7364) 「孫子の兵法」⑦ 希望的観測という無謀な賭け
「孫子の兵法」⑦ 希望的観測という無謀な賭け
悲惨な事故は、たいていポジティブな予測から生まれる。予測には二つの方法がある。一つには事故が起こらないと考えて行動すること。二つ目は事故が起こるかもしれないと考えて行動すること。起こらないと考えて行動すると事故の確率はうんと高くなる。たいていの人は、自分について非現実的なほどポジティブになる。自分を過大評価しがちになる。
勝つ能力を備えている者ほど、多くの準備が必要だと考えている。希望的観測をする人は、準備をおろそかにする危うい人だと言える。「戦争指導に優れた君主は、先ず政治を革新し、法令を貫徹して、勝利する態勢を整える」。いかに客観的に正しい評価を下すか。孫子は興味深い発想をしている。それは一点だけで相手と自分を見るのではなく、複数の点で比べる。
戦争を始めるのに安易な希望的観測はない。そこで「君主の政治」「将師の能力」「天の時と地の利」など、全部で七つの基本条件に照らし合わせて、彼我の優劣を比較検討し、戦争の見通しを付けるという。これはビジネスでも同じ。何とかなるだろうでは勝てない。表面的な比較や感情論ではなく、多方面に優劣を比較する。勝つと解れば勇敢に前進する。
「あなたの仕事の成績は、会社全体で上位半分に入っているか」。この質問に答えを出すときも、同じように多面的に考えたい。①個人としての売り上げ成績、②指導している部下の成績、③部署の勢いへの影響、④上司の力、⑤会社の長期的戦略への貢献など基本条件を洗い出し、周囲と比較検討する。単なる感情とは異なる判断が出来る。冷静さと客観性が大切。