平成22年11月7日(No5071) 本を読まなくなった
本を読まなくなった
鍵山秀三郎さんは他に例を見ない読書家だ。あの忙しい日々でいつ本を読まれるのか不思議で仕方がない。講演などで読んだ本の話をされるとき、覚えにくい外国の地名、人名、数字などすらすら言葉にされる。資料を見ながらの講演は聴いたことがない。良書との出会いを紹介してくださるが、取っ付きにくい本が意外に多い。単なる読書好きには荷が重い。
日本人の名前は比較的覚えやすいが、長いカタカナの西欧人、似通った漢字の中国人の名前は苦手だ。その質問をしたときあっさりと「感動したら『転写』できる」と言われた。これは特別な能力だと思う。「読書力のある人」と「読書好き」は違うことも。私などのように一人の作者にのめりこむタイプは、単なる本好きであって必要な本が読める読書家とは違う。
本屋をのぞくと毎日のように新刊が積まれている。中古本の棚も賑わっている。本は読まれていると思っていたが、出版社の経営状態は軒並み芳しくない。読売新聞の調査によると一ヶ月に一冊も本を読まなかった人は50パーセントを超えると言う。理由は「時間がない」「読みたい本がない」「本を読まなくても困らない」。その気がなければ時間は作れない。
電子書籍の誕生により本屋で購入しなくても、読みたい本が読める時代になった。それでも「利用したことがない。利用したいとも思わない」人が65パーセントを超える。人間は自然、本、人との出会いで成長するというが、その三要素にそっぽを向く人が増えた現在、人間関係に潤いがなくなるのも当然の帰結か。読書の秋を迎え反省しきりの日々だ。