平成23年1月8日(No5133) 近代史に名を刻む宰相になれるか
近代史に名を刻む宰相になれるか
最近の政治家は明確な言葉を発する能力を失っている。いくら思いがあっても、具体的に口にしなければ国民に伝わらない。菅直人首相は年頭の記者会見で、珍しくはっきりモノを言った。小沢一郎前民主党幹事長に「不条理を正す政治」の一条件として、表舞台から去るように忠告した。この一言で長い間日本の政界に君臨した小沢一郎の名が消えるだろう。
条件を整えるにはこれから難所に差し掛かるが、痩せても枯れても最高権力者の意思だからその方向に進む。そうなれば鳩山由紀夫前首相も出番がなくなり、得意の軽口撤回でもう一度引退を表明するかもしれない。小沢一郎の降壇は単に民主党の害毒を取り除くにとどまらず、田中角栄時代から続いている政治の仕組みが終焉することを意味する。目出度い。
菅首相が公約どおり「国民生活第一の政治」を目指すなら、目標をまず決定して然る後に実現する条件を整えてもらいたい。条件を整えてから物事を決めるのであれば、何一つとして実現しない。平成の開国→TPPに参加、財政再建→国会議員、公務員の削減、消費税増税などによる安心社会。日米安保体制確立→普天間基地の移転など、まず決定すること。
国民の支持率を気にしない、政界や経済界に斟酌しない。評判の悪い子ども手当をはじめ農政や高速などのばら撒きは、誰が反対しても止める。総理大臣の鶴の一声はそれだけの力を持っている。一つ一つを着実に実らせれば総理の座を失うかもしれないが、近代政治史に菅直人の名前が刻まれる。もはや失うものはないだろう。乾坤一擲の勝負を賭けるときだ。