平成23年2月12日(No5168) 老老介護の悲劇
老老介護の悲劇
安佐南区で手術をしなければならない79歳の夫が、介護をしていた認知症の78歳の妻を殺し、自殺した。最近はどこにでもあるような平凡なニュースだが、このようなケースは急激に増えつつある。事件が起きる前に親族を集め、これからの身の処し方を相談した。推測に過ぎないが、誰も妻の世話をするとは言わなかった。できなかったのだろう。
病気の夫は一縷の望みを絶たれて、無理心中の道を選んだと思われる。昔はどうだったのだろうか。昭和20~30年代にかけてのわが家は、祖父母、母、弟二人、叔母、従兄弟の8人家族だった。集落ではもっと家族の多い家もあった。介護ということばに記憶はないが、年老いた身内を最後まで看取るのはごく当たり前のことでしかなかった。
昔の子どもたちの情が厚く、いまは薄くなったから悲劇が起きるのかといえば、そうではない。情はあっても習慣がないから、自分の暮らしを犠牲にしたくないだけだろう。私たちが同じ立場になったらどうするか、わが家でも話題になった。妻の思いは分からないが、私はためらわず安佐南区の事件と同じ道をたどると思う。ただし、もっと洒落た方法で…。
夫婦とはそういうものだ。とことん助け合って労わり合って、最後には一緒に旅立つのがよい。PET検査を受けたが、予想の範囲を超えなかった。政治家のことばと似ているが「肺がんは注意深く見守る」、新しく大腸がんの疑いを指摘された。内視鏡検査を受けるが、最悪でも胃がんの全摘出手術に比べれば、悩むほどのことはない。楽観している。