平成23年4月18日(No5233)  土葬を巡る議論

土葬を巡る議論

昨日は母の一周忌法要を営んだが、わが家では遺体を火葬して骨を土葬する方式を取っている。それが当たり前だと疑問を抱かなかったが、東日本大震災における遺体の扱いについて議論が生まれている。宮城県では「土葬に対して抵抗感があり、遺族の悲しみが増すようなことはしたくない」と東京都に火葬を依頼した。火葬を望む遺族感情を尊重した。

 

火葬が正当で土葬は苦渋の選択だという。私も長い間そう思っていた。立命館大学の加地伸行教授の説によると、①儒教文化圏(日本、朝鮮半島、中国など)では、土葬が正当であるという。②火葬はインド宗教の死生観に基づいて行われ、火で遺体を焼却した後、遺骨をガンジス川などに捨てる。③日本の法律で言う「火葬」は遺体処理の方法を意味するだけ。

 

遺体焼却後、日本では遺骨を集め土葬する。(a)遺体をそのまま埋める〈遺体土葬〉か、(b)遺体を焼却したあと、遺骨を埋める〈遺骨土葬〉か、どちらかを選択するが、いずれにしても土葬である。正統的には(a)、最近では(b)ということ。(b)は平安時代に始まるが一般的ではなく、ここ50年ほどの間に普及したもの。だから土葬が死者に対する不敬ではない。

 

加地教授は「東北の方々よ、遺体土葬は決して非常手段ではない。むしろ伝統的であり、死者のための最高の葬法である」と話しておられる。習慣上、感情からそうだそうだと割り切れないが、儒教文化をひも解くと納得できる。震災の後始末の過程では、くぐらねばならない関門だろう。土葬は是か、火葬に拘るか、発電所周辺の捜索が進めば議論は再燃する。

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