平成23年9月22日(No5390) 「選択」と「集中」
「選択」と「集中」
先日、宇品港まで送ってもらう途中、何気なく周囲を見ていた。広島市役所を過ぎたとき、あっと驚いた。かって住宅機器などのショールームとして馴染みのあったパナソニックビルの一階に「テナント募集」の貼り紙がしてあった。一部か全体かは分からないが、ともかく賃貸するのである。パナソニックほどの世界企業が、単なる不況対策ではないだろう。
以前は紙屋町の電車通りに旧松下電器のショールームがあった。LPガスや器具を販売していた創業の頃、広島では初めてのショールームを使った展示即売会をしたことがある。今では珍しくもないが、当時としては破天荒な出来事だった。ショールームは商品を見せるところ、販売する場所ではなかった。広いショールームをウロウロしたが、大成功だった。
やがて松下ビルは建替えてオフィスビルになり、本社は現在の新しいビルに引っ越した。バブルの崩壊や世界的な大不況で重かった「経営の神様・松下幸之助」の冠を思い切って取り去った。そして見事に立ち直った。その要因は「選択」と「集中」だと理解している。ムダを排除し、柱になる事業を「選択」して伸ばす。資源を分散せず「集中」し効率化する。
企業にとって進むのは易しいが、退くのは極めて困難な仕事だ。大抵の大企業は不況を克服しながら経営を立て直し、利益を上げている。そこには先見の明もあるが、面子など度外視し徹底した合理化によるところが大きい。得意とする分野を特化して戦力を集中することが、不況を乗り切り、生き残る要諦だろう。テナント募集の貼り紙から凄さを知った。